第二章  野鯉のタックルと仕掛け

 

 野鯉を釣るためには、そのための道具が必要となります。では、どんな道具が適しているのかと言えば、狙う対象魚の大きさ、釣り場の環境、釣り方の種類、釣り人の技術・体力等の条件により、それぞれ変化します。

 ここでは、野鯉の中型から超大型迄を対象として、より多くの釣り場に対処できるタックルを主眼に解説することにします。

 

<竿>

 海の舟釣り等では今でも竿を使わない釣り方が行われている場合もありますが、釣りをスポ−ツとして楽しむ事ができるようになったのは竿を使うようになってからでしょう。繊細な小物釣りから、豪快なトロ−リングに至るまで、それぞれの対象魚に合わせた竿を使うようになってから、釣趣は何倍にも増加しました。

 では、釣りにおける竿の役割にはどんなものがあるのでしょうか。

 

@エサや仕掛けをポイントへ運ぶ。

 竿を使用する事により、竿は腕の延長として、ポイントは何倍も範囲が広がりました。特にリ−ルと併用する事により、その範囲は画期的なものとなりました。足元のポイントから、100b先の沖合まで自由に狙う事ができるのです。これにより、釣果は飛躍的に増大し、大型も良く釣れるようになったのです。

 

A魚のアタリを伝える。

 ウキを使用しない脈釣りでは、竿の穂先がアタリを知らせる役割を果たします。特にリ−ルを使用するぶっこみ釣りでは、その動きによっていつアワセをするかという重要な役割を持っています。そのため、アタリの状態をはっきりと示す敏感な穂先が必要となります。また、魚がエサを吸い込んだ時、違和感を与えないような柔軟な穂先であるという事も重要な条件です。

 

B魚の口に針を掛ける。

 この場合の役割には二通りあります。向こう合わせと掛け合わせです。

向こう合わせの場合、魚がエサを吸い込んだ時に竿の反発力により針が掛かるというもので、竿の反発力が弱いと針掛かりが浅くバラシの原因となります。

 掛け合わせの場合は、穂先に出たアタリを見て竿を鋭くあおり、魚の口に針掛かりさせる訳ですが、この時アタリの状態をはっきりと示す柔軟な穂先が必要となります。

C魚の抵抗力を吸収して仕掛けの切断を防ぐ。

 竿に求められる一番大きな働きがこれであると言っても良いほど重要な条件で、バネの働きをする事により、ラインに掛かるショックを和らげ、細いラインでも大物を取り込む事ができるようにします。同じ素材であれば、柔らかい竿ほど細いラインの切断を防ぎ、堅い竿ほど太いラインに耐える事ができます。また、長い竿ほどストロ−クが大きいため幅広い対応力を持ち、短い竿ほど対応力が小さくなります。したがって、優れた竿とは柔軟性と強靭性の両方をより多く兼ね備えた竿と言えるでしょう。

 

D障害物を避ける。

 河川や湖沼の岸辺には、テトラや捨て石、ソダといった護岸・水制に使われる障害物が水没している所が多く、そんな所ではそれを避けるためにある程度の長さが必要となってきます。場所によっては、10b以上も沖合に張り出した沈床もあり、それ以上の長さの竿があれば、それをかわす事もできるのですが、あまり実用的ではありません。仕掛けを投げたり、魚とやり取りしたり等の他の役割との兼ね合い等を考えると、5b前後の長さが使いやすさの上限と言えるでしょう。

 

 

E魚を取り込む。

 野鯉の大きさは、普通のもので4キロ、大型は10キロを超え、中には20キロを超えるようなものまでいます。その割りには海釣りなどと比べると仕掛けは繊細で、強さだけを追求した竿では、仕掛けがもちません。逆に、柔らかすぎる竿も、魚を寄せる事ができず、取り込みが難しくなります。

 そこで竿の調子の目安は、4キロクラスのサイズなら確実にあしらえ、10キロクラスでもゆとりがあり、20キロクラスが掛かっても魚を休ませないだけの強さが必要です。

 

竿の種類

太さ

 竿の太さには、竿先から手元まで順に太くなるというのが普通で、元竿は握りの太さが最も力を入れやすい太さが適しています。握りやすい太さというのは手の大きさにより変化しますが、親指と人差し指の間にできた輪の直径位が良いようです。

 穂先の太さというのは、素材の強さにより違いますが、向こうアワセの多い野鯉釣りでは、30号のオモリと100c程のネリエサを投げ得るだけの強さを持ち、なおかつ食い込みの良い柔らかさが必要となります。

 

重さ

 竿の重さは同じ強度であれば軽ければ軽いほうが良いのですが、重心の位置によっても手ごたえは大きく変わり、リ−ルとのバランスも考えて選ぶ必要があります。

 

長さ

 竿の長さは、長いほど弾力が増し、短いほど弾力が小さくなります。また長いほど重くなり、短いほど軽くなります。したがって、長い竿ほど扱いが難しく、短くなるほど扱いやすくなります。そこで、どのようにバランスを取るかということが選択のポイントとなります。リ−ルを使わないヘラブナ釣り等では、この問題の解決方法として、長さの違う竿を何種類もそろえることで対応していますが、同じ竿を数本使う野鯉釣りでは、それ程何種類もそろえる訳には行きません。障害物の多いポイントで釣る事の多い野鯉釣りでは、5b前後の長さがより広く対応できるでしょう。

<長竿の長所>

 魚とやり取りをする時、弾力が効きためが効く。

 仕掛けを上げる時に、岸辺の掛かりを避けやすい。

 近いポイントへ送り込みで静かに仕掛けを入れる事ができる。

 柔らかいエサを遠くまで投げる事ができる。

<長竿の短所>

 重い。

 風に弱い

 狭い所では扱いにくい

 投げる時、コントロ−ルが難しい。

<短竿の長所>

 軽い。

 風に強い。

 狭いところでも扱う事ができる。

 投げる時、コントロ−ルが易しい

<短竿の短所>

  弾力が少なく、ためが効かない。

 掛かりの多い所を釣りにくい。

 柔らかいエサを遠くへ投げにくい。

 送り込みで静かに入れるポイントの範囲が狭い。